人は何のために働くのか

 2年生は,現在職場体験にむけて,事前訪問のための「アポを取る」電話を事業所にかけています。緊張してセリフが棒読みだったり,なれない言葉遣いで舌が回らなかったり悪戦苦闘する中でも,生徒の一生懸命さは相手に伝わったと思います。また,相手の呼びかけに対してアドリブでしっかり応答できる生徒もいて,「感じが良いな」「社会に出て生きていく力があるな」と思う一幕もありました。
 さて,生徒が電話をする前に,我々教職員は,事前に事業所を訪問し,どんな生徒が来るのか,今後どのようなスケジュールで進めていくのかを説明しています。先日ある事業所を訪問したとき,そこで聞いた話が印象に残りました。
 そこでは,仕事を退職した人に,新たな仕事を斡旋しています。会社の重役や,責任のある目立つ仕事をこなしてきた人が,やっと定年を勤め上げて退職したのに,そこでは草むしりなど,いわば誰でもできる,目立たない仕事を喜んでされるそうです。それはなぜでしょうか。
 「彼らは,お金のために退職後も仕事をしているのではない。年を取っても,社会とつながって,何か人の役に立ちたいから仕事をしているのです。人の役に立つことが生きる喜びなのです。つまり彼らにとって,退職後の仕事は,いわば生き甲斐なのです。」
 「仕事をすることが生き甲斐」という言葉が,私の心に響きました。いくつになっても,人は他者のために役に立ちたいという思いを持っている。「人の役に立つ喜び」が,一生懸命仕事をする原動力なのでしょう。人は何のために働くのか,生徒にとってはまだまだ身近ではないテーマですが,この職場体験を通して,望ましい勤労観,職業観をしっかりと育てていきたいと思います。(文責 岡寺)