思考力・判断力が必要なわけ

 期末懇談が始まりました。各教科等の評定を見て,喜んだ人,落ち込んだ人とさまざまだと思います。5段階の評定だけでなく,観点別評価も見てくださいね。その教科のどんな領域が弱いかがよく分かります。
 さて,観点別評価のうち,すべての教科の2番目に位置づけられているのは,「思考」や「判断」に関わる能力の評価です。生徒からは,よく,「穴埋めはできるけど,文章を書く問題は苦手」「問題ができたらそれでいいのに,なんで考えたり説明したりしないといけないの」「考え方の問題がなければいいのに」などという声を聞きます。なぜ,どの教科でも,「思考する力」や「判断する力」を育成しなければならないのでしょうか。
 先週の土曜日から,臓器移植法が改正され,臓器を摘出するため「脳死」の判定をするかどうかは,遺族の判断にゆだねられることになりました。土曜日のニュースでは,多くの番組が「人の死」について考える特集を組んでいました。様々な専門家が,「人の死とは・・」について意見を述べていました。その中で,「バカの壁」で有名な解剖学者の養老孟司氏だけは,他の専門家とちがって,次のように述べました。「人の死について,一般的にいえる決まりなどできるわけがない。人の死は,その人を取り巻く様々な人たちとの関係によって定義されるものである。したがって,私たち国民一人一人が,自分の大切な人がどのような状態になったとき,その人が”死んだ”と受け止めるかについて,しっかりと考え,判断しなければならない」
 私は,養老先生のような著名な方が,「一人一人が考えて判断すべき」と述べられた点がとても印象に残りました。こんな大切な問題が,私たち一人一人の判断にゆだねられるのかと。そう思ってみると,生徒が大人になったとき,「考えて判断すべき」ことは多岐にわたり,それを避けていたのでは,市民として生活していくことはできないのだと思います。
 今生徒には,そのようにつきつめて考えて判断する内容はそこまでないのかもしれない。しかし将来,大人になったときのために,「しっかり考えて」「筋道を立てて考え」「人に意見に耳を傾け」「自分の責任で判断し」「その結果に責任を持つ」練習を今のうちからしっかりとしていかなければならないと思います。そのために,全ての教科の中で,「思考力」「判断力」の育成が求められているのです。「わかる」「できる」ことはもちろん大切。しかしそれを基礎として,「考える」「判断する」力をつけるため,積極的にそのような問題に取り組んで欲しいと思います。2学期以降「考える」ことにこだわって頑張る生徒が増えてくれることを期待しています。(文責 岡寺)